第2回 "英語上達の近道"


アメリカで医療を行うには、当然英語力が必要です。英語を勉強しないのなら、日本の国内でしか活躍の場はないですが、世界共通語の英語を自由に使えれば、世界中が活躍の場となります。日本という国が世界で今ほど認められ、尊敬されている時代はありませんでした。日本の医師は、当然英語に堪能になるべきです。

英語を勉強する時の心構えで大切なことは、外国語を勉強すると考えてはいけないということです。英語は外国の言語ではなく、自分の言語だと認識しなければいけません。自分の言語だというには、ある程度の勉強が必要なのですが、皆さんはどうお考えですか?

実は覚えた単語数が3000語以上だと、その言語は忘れることはなく、身につくといわれています。第二外国語でドイツ語などを勉強すると分かるのですが、覚えた単語数2500語で3000語に満たないと、何年か経つと綺麗さっぱり頭から消えてしまいます。3000語以上覚えたなら、一生その言語が使えます。日本の大学医学部に入学された皆様は、英単語が3000語以下では入学試験に合格できませんので、すでに3000語のラインは突破していると考えて安心してください。つまり、英語はあなた自身の言語なのです。

このシリーズでは、“英語の上達の近道と勉強の作戦”を考えます。
まず、英語上達の第一歩は英単語です。英単語を覚えなくては何も始まりません。どの単語帳を使えばいいのでしょうか。好みがありますから、どんな単語帳でも自分が気に入ったものを使えばいいのですが、英検準一級の単語約2000語を覚え、それが終わったら英検1級の単語約2000語を覚えればいいでしょう。皆さんが、すでに覚えている3000語に加え、これら覚えると計7000語になります。
英検1級と聞くとそれだけで難しいと思ってしまいますが、アメリカで暮らしていると、英検1級はなんだか簡単に思えてきます。アメリカ人の友人達に見せても、まあまあのレベルで特に難しいとはいえないという感想でした。あまり英検1級に怖気付いてしまわないように。本当の英語の難しさは英検1級の向こうにあるのです。

 

“英単語は短期間で覚える”

さて、約4000語を勉強するといいましたが、あまり時間をかけずに、短期間に覚えるのがいいようです。1日30単語を覚えると、10日で300語、1ヶ月で900語、3ヶ月ほどで準1級は終わります。半年ほどで必要な英単語は終わります。
覚える際には、今日覚えるべき30単語を、ノートに書きながら口で発音を唱えながら覚えます。書きながら覚えると、スペルもきちんと覚えられ、自分で発音することにより耳からも覚えていきます。
1日の覚えるべき単語を覚えたら、昨日覚えた単語、2日前に覚えた単語、3日前に覚えた単語を順番に遡って復習します。忘れてしまうと自己嫌悪に陥ってしまいますが、心配いりません。忘れる数より覚える数の方が多ければ単語数は確実に増えていきます。忘れても、また覚えればいいのです。ここに語学を勉強するコツみたいなものがあります。辛抱強く努力を続けなければ語学はものにできません。英単語を覚えることを習慣として、一生続けてください。これが、国際的に活躍する人間全てが陰でやっていることだと思ってください。

 

“アメリカ人は英語が出来るのか?”

アメリカ人はさぞかし英語ができるのだろうと皆さんは考えておられると思いますが、実際はどうなのでしょう。私が東京にいたころ、数人の友達と“せんべいって漢字でどう書くんだっけ”と話し合っていましたが、全員日本人なのに誰も漢字で書けませんでした。たまたま、そこにアメリカ人の友人がいて、彼が“煎餅”と教えてくれたので、一同恥じ入ったことがあります。アメリカ人の友人はカリフォルニア出身で、アメリカにいた頃、日本語をひとりで勉強していました。日本人はさぞ日本語ができるのだろうと、自分に鞭打ち、相当日本語を勉強して日本に来たのですが、来てみたら日本人は想像していたほど日本語ができませんでした、とのことでした。

アメリカ人の英語についても、似たような状況があります。アメリカは高校までの教育がそれほど良くありません。大学教育は日本より優れている面が多々あるのですが、アメリカの高校までの中等教育は問題だらけです。特にひどいのが英語教育で、そのため、どの大学も入学してから最初の2年間はアメリカ人の学生に、まず英語を教えることに多大な時間を費やすのです。そして、2年間で英語を上級レベルにしてから、後半の3年~4年で専門教育を行います。つまり、アメリカ人でも高卒と大卒以上とでは英語のレベルが随分違います。前述したように、英検1級までの単語を覚えるのは、このアメリカの大学の最初の2年間と同じレベルまで実力を押し上げるために行うのです。

ジャナメフ【2016年08月17日】


著者プロフィール
小林 恵一(こばやし・けいいち)
1980東京大学文学部西洋史学科卒業、1988年神戸大学医学部卒業。1990年~1993年南カリフォルニア大学ハンティントン記念病院内科レジデント、ハワイ大学内科レジデント。東京八王子東京天使病院内科部長、御代田中央記念病院副院長を経て、1997年米国ハワイ州ホノルルにて開業。2014年より財団評議員。