第6回 "よく使う慣用句"
英語の教科書には載っていないけれど、日常一般的に使用される英語があります。これは日本語にもあります。ハワイに住んでいますと、日本語を学校で勉強したというアメリカ人は沢山まわりにいまして、様々な日本語レベルに遭遇します。
その中で私が感心したのは、あるアメリカ人が日本語で会話していた時、"うん、それは言えてる"と発言したことです。
日本の若者の中にはこの言葉を使う人が多いのですが、教科書だけで勉強していると、こういう言い方はできません。果たして、このアメリカ人は日本で短期間ながら住んだことがある人でした。英語にはこの種の慣用句が沢山あります。
"Knock yourself out"
どうぞご自由にやってください、勝手にやってくださいの意。
(例)"Can I have a piece of your burrito? " "Knock yourself out."
ただ、時々、否定的な意味で、本当は不承知だが、勝手にすればいい、という意味にも使いますから、前後の会話の流れをつかんで正しく解釈しないとおかしなことになります。
(例)If you want to make hotel and airline reservations and take care of everything, well, then, knock yourself out.
"Hit the hay"
藁をたたく=寝るという意味です。Hit the hayというのはアメリカ人だけのスラングで、昔、寝具(枕とかマットレス)の中に麦わらを詰めていたため、それをたたいて柔らかにすると寝心地がよくなることから、こういう言い方が出てきたのではないかと私は思っています。
(例)I am tired, I have to hit the hay soon.
同じ意味でHit the sackとも言います。
アメリカ人はHitするのが好きで、hit the roadという言い方もあります。道路を叩く=旅に出る、出発するの意。
(例)We have to hit the road very early in the morning.
"Consistent with"
これはカルテでよく使う常套句。整合性がある、以下の診断をサポートするなどの意。
(例)These findings are consistent with diagnosis of lung cancer.
この言い回し、しょっちゅう使うため c/w と省略されることもあります。
These findings c/w Dx of lung cancer. などと書かれます。
"Cut some slack on"
大目にみるの意。これこそこんな表現をしたら生粋のアメリカで育ったアメリカ人の言い回しです。インドやアメリカ以外の英語圏の人間がこの表現をするのを聞いたことがありません。また、英語を母国語としていない人でこの表現を使ったら、アメリカで相当長く生活していた経験があるとみて間違いないでしょう。
(例)He's the new kid on the block and doesn't know the way we do things around here yet. Cut him some slack and let him learn from this.
"Old man"
おやじさん。部下などが、年齢が上の男性の上司を指していう言葉。面と向ってはさすがに言わず、本人がいない時、仲間内で使います。かなり親近感を込めていう言葉で、愛情がこもっています。上司が女性であったら Old Womanとは言いません。また、Old manは本当の自分の父親を指していたり、結婚相手の旦那さんを指しても使われます。
"Neck and Neck"
互角の勝負の意。どうも競馬からきた言い方みたいで、"win by a neck"(僅差で勝つ)という言い方もあります。
馬の頭分の差でゴールに先に到着するという意味で、Neck and Neckは馬の頭が交互に先頭を変わるという意味からきているようです。競馬というと、日本の競馬を思い浮かべてしまいますが、イギリスでは王立Ascot競馬場があり、参加者は厳しい服装規定で灰色のモーニングを着用し、貴族の社交場となっていますから、競馬に関する言い方も上流社会由来という印象です。
(例)John and Tom finished the race neck and neck.