JANAMEFメルマガ(No.36)
日本版ホスピタリスト【短期】助成 研修報告
中原 舜
社会医療法人愛仁会 高槻病院
総合内科
この度、日米医学医療交流財団からの助成を受け、ハワイ州にあるQueen's Medical Centerのホスピタリスト部門を見学させて頂きました。今後のキャリアにおいて非常に有意義な経験となったため、その内容を共有させて頂きたいと思います。私は現在大阪の高槻病院、総合内科にて研鑽を積んでいる傍ら、臨床留学を目指しております。今回の研修の目的は主に4つあり、1.米国のホスピタリスト部門の診療を直接見ること、2.日米間の診療の違いを理解すること、3.米国の研修医に求められる能力を知ること、4.もし将来米国で研修医になった暁にはどのような経験が得られるかを知ることでした。以上の4つに分けて、日本の若手総合内科医の視点で、学んだことや感じたことを記載したいと思います。
1.Queen's Medical Centerのホスピタリスト部門について
Queen's Medical Centerは約575床を有する高度医療機関で、ホスピタリスト部門では約380床を担当します。自分が研修した期間だけでも、急性冠症候群、気管支拡張症の悪化、血液がんなど、日本では主に専門家が入院管理を行う疾患を、ホスピタリストが中心となり各科と協力して診療しておりました。全米で同様のシステムが導入されていると思われますが、ハワイでは米国の大都市に比べて専門家の数が限られているため、ホスピタリストがよりautonomyを発揮できているのではないか、というお話も伺いました。また、レジデントや医学生の内科ローテーションも主に同部門で行われており、幅広い疾患を入院管理のプロであるホスピタリストの元で学ぶことができます。総合内科医である私としては大変魅力的なシステムであり、もし同様のシステムを日本でもうまく実現することができれば、多様な併存疾患を持つ日本の高齢患者診療において利点が大きく、内科の卒前卒後教育の質も大きく向上させる可能性を感じました。
2.日米の診療の差異
これまでも米国の医療システムにおける診療を経験する機会はありましたが、卒後6年目で改めて研修することでより明確化したこともありました。米国の医療システムでは、検査や治療に対するエビデンスベースのアプローチが厳密にされているため、留学を目指している身として、日本での日常診療でもそこを意識しているつもりでした。しかし、それでも尚「普段自然と行っているプラクティスが実際にはどれだけ根拠に基づいているか」をより突き詰める必要があることを実感しました。また、日本とは違い患者の人種や背景が多様であり、それぞれに対する見識を深めることがより良いケアにつながると感じました。
3.米国の研修医に求められる能力
日本人医師の先生方や、現地のレジデントとのお話を通じて、研修医として機能するために何が必要か、どの様な人物が求められているかを考えることができました。ご存知の方も多いように米国の卒前研修が優れており、インターンの時点で、RIMEモデルでいうInterpreterやManagerとしての役割が期待されています。やはり先程述べたように根拠に基づいたアプローチを正確に英語で表現できることが最低限求められており、他職種との連携や患者への病状説明などコミュニケーションも同様にプロフェッショナルな英語で行える必要があります。私の感想にはなりますが、求められる人物像としては日本と同様であり、チームプレイヤーで、組織全体を向上させることができる人物が研修医レベルでも求められている印象でした。
4.米国レジデントを通じて得られるであろう経験
臨床経験という点においては、ホスピタリスト部門を中心に内科管理を学ぶことで幅広い疾患を経験でき、それぞれに対するグローバルスタンダードな診療を学ぶことができるが大変魅力でした。また、Quality Improvementや医学教育なども研修を行いながら学び、それをアウトプットできる環境があり、研究の期間なども設けられている点も、日本にはない魅力です。
今回の研修を通じて渡米への課題や渡米の魅力を改めて認識することができました。助成して頂きました日米医学医療交流財団様には、この場を借りて心からの感謝の意を表したいと思います。ありがとうございました。
執筆:中原 舜
社会医療法人愛仁会 高槻病院
総合内科