第4回 "英語上達の近道"(その3)


英語を上達するためには、英語を遣う場面をシステマティックに体験する必要があり、そのためには英語のドラマを英語で視聴し、英語の字幕を見る方法を前回お話ししました。教材はどれがいいのでしょうか。あまりつまらないドラマだと長続きしませんので、いくつか私のハワイのクリニックで英語を勉強する留学生に使っている教材を紹介します。

  1. NCIS (Naval Criminal Investigation Service)
    アメリカで大変人気のあるドラマで、アメリカ海軍警察(海軍犯罪捜査局)の物語です。リーダーの捜査官Gibbsのもとに個性的な部下たちが出てきますが、アメリカでの職場の普通の会話を学ぶのに適しています。この会話が面白く、上司との関係、同僚との関係でどのような言葉遣いをするのかが学べるドラマです。アメリカの普通の会話を勉強する入門としてお薦めです。シーズン14まであります。
  2. J.A.G(Judge Advocate General)
    NCISの兄弟番組でこちらは海軍法務部のドラマです。NCISのドラマの中にJAGの出演者が弁護士として登場したりします。
    海軍には法律を専門とする法務部があり弁護士たちが働いています。アメリカ海軍と海兵隊の中で起きる様々な問題を調査したり軍法会議にかけたりします。NCISよりやや法廷の専門用語が多くなり、難解な英単語が出てきますが、ドラマとしては国際テロとの戦いなど、冒険的な物語で娯楽性に富んでおり、あまり難しさが気になりません。NCISよりやや上級の会話を勉強する内容です。シーズン10まであります。
  3. CSI(Crime Scene Investigation)
    CSI は3つのドラマがあり、ラスベガス、マイアミ、ニューヨークの警察の鑑識の物語です。英語だけでなく、法医学的な知識も学べます。NCIS、JAGほどの冒険活劇の娯楽の要素は減り、そのかわり科学的な考察の面白さで勝負する内容です。3つの都市のうち、特にラスベガスのシリーズは死体も腐乱死体までリアルに見せますし、検死も細部にいたるまで本物を見せようとしています。医学的内容が加わり、勉強になります。
  4. Law & Order
    最後に挙げますのは、ニューヨークの警察と検察の物語、Law & Orderです。ドラマの前半は殺人事件の犯人を警察が逮捕するまでを描き、後半は検察がそれを有罪にするという内容です。アメリカでは刑事訴訟法的手続きを日本よりはるかに重視し、簡単には有罪にできません。ドラマの中では法律の専門用語が飛び交い、かなり知的な英単語を縦横に遣い法廷弁論をします。英検1級の英単語が本当に簡単に思えてきます。英単語の難易度といい、理解するための社会制度の理解、英米法独特の経験法的な法律運用、陪審員制度など、アメリカで知的に生活するために必要な様々な内容が勉強できます。シーズン20まであり、このドラマを見て勉強した後は、アメリカのどんな知的な状況で会話しても怖くなくなります。

これらのドラマはどのレベルから始めてもよいのですが、必ず英語で聞き、英語の字幕を出します。分からなければ止めて調べながら読み進めてください。

ジャナメフ【2016年10月17日】


著者プロフィール
小林 恵一(こばやし・けいいち)
1980東京大学文学部西洋史学科卒業、1988年神戸大学医学部卒業。1990年~1993年南カリフォルニア大学ハンティントン記念病院内科レジデント、ハワイ大学内科レジデント。東京八王子東京天使病院内科部長、御代田中央記念病院副院長を経て、1997年米国ハワイ州ホノルルにて開業。2014年より財団評議員。